すぎやまの日々

鉄道&Eスポーツライターの日常とか。

北方謙三の三国志



 北方謙三さんの三国志を読了しました。面白かった。僕は歴史モノが苦手ですが、これをきっかけに歴史小説も読もうと思います。

 三国志をテーマとした作品はいろいろあります。僕が過去に読破した三国志は横山光輝のマンガでした。これは吉川英治の小説のコミック化です。三国志というと横山版をイメージしていましたから、劉備は徳の人でヒーロー、曹操は戦好きで狡賢い敵、孫堅の印象はなんとなく薄い、そんな感じでした。劉備を善、曹操を悪とする勧善懲悪な印象もあります。若い頃に読んだので人物を読みきれていないということもあるでしょうが。
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時生


遺伝病の可能性を覚悟して結婚したふたり。運命は皮肉にもひとり息子の命を奪おうとしていた。その時、夫は妻に語り始める。「俺、実は息子に会っているんだ。20年前に……」

シリアスな場面から一転、本編とも言うべき回想物語ではスピーディな展開です。息子がタイムスリップしたという設定は最初から明かされています。ネタバレっぽいですが、それが読者の視点を先へ先へと向かわせています。主人公は相棒つまり未来の息子と共に、失踪した恋人を追います。しかしこの恋人は息子の母親ではありません。読み手はハッピーエンドを期待しつつ、それでは物語の辻褄が合わないことに戸惑うわけです。どうなるんだろ、どうなるんだろ、と思いつつサスペンスを楽しみ、最後にドーンと泣かせてくれます。小説を読んで泣くなんて久しぶり。ゲームショウの帰り、京葉線の電車の中で泣きそうになって困りました。おすすめです。
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皇帝のいない八月

昨日の取材の帰りにブックオフをぶらついたら、皇帝のいない八月をみつけた。懐かしい。ブルートレインブーム全盛期の映画の原作です。自衛隊がクーデターを起こし、寝台特急さくらをジャックする話。電車好きのノリで観に行ったら、けっこうハードな内容でドキドキしたもんだ。あのころボクは12歳。

去年、DVDが発売されていたんですね。レンタル屋にあるかな?

この『皇帝のいない八月』というタイトルが謎。設定では事件は4月に起こってる。映画ではたしか、『皇帝のいない八月』というクラシック音楽のレコードが映っていました。でも小説では一切タイトルの意味が証されていません。なんで八月なんだろう? クーデターの作戦暗号名として時期を偽装したかったのかな。ちなみに映画のヒロインは吉永小百合さんが演じました。
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天空の蜂


天空の蜂 (講談社文庫)

天空の蜂 (講談社文庫)

講談社
映像化すべきミリタリーサスペンス!



自衛隊の最新鋭輸送ヘリが盗まれた。ヘリは原子力発電所上空に留まり、犯人たちは「要求が叶わなければヘリを落とす」と表明した。最先端の技術者と老刑事が解決に全力を尽くす。燃料切れのタイムリミットは10時間!

推理小説でデビューした東野圭吾氏は、推理作家ではない。もっと自由なミステリー作家です。『白夜行』では謎の男女の数奇な人生を描写し、『殺人の門』では悪徳商法と狡猾な友人に翻弄される男の人生を描き、『手紙』では殺人犯の家族の葛藤を通して罪と償いの真実を書きました。『秘密』では家族愛を深く追求しています。ただ、作品には共通した部分もあって、最後にとっておきのカードを出して読者にドーンと印象づける。この切り札テクニックが東野作品の魅力です。

さて、「天空の蜂」ですが、テクノロジーに長けた犯人グループに対して、アナログな老刑事が迫っていく課程が好対照です。しかも直接対決はナシ。地道に自分の足で犯人を追いつめる。これが見所のひとつ。原発の恐怖と電気に頼った人間への警鐘、社会派ミステリーという見方も多い作品ですが、私は老刑事にもっとも惹かれました。

それよりも何よりも、東野圭吾氏の引き出しの多さに驚きます。真保裕一さんのホワイトアウト、福井晴敏さんの亡国のイージスを楽しめた人にはオススメです。タイムリミットサスペンスとしては、新幹線大爆破やスピードに匹敵する面白さ。人質救出のハラハラする場面もいい。映画化して欲しいです。
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探偵ガリレオが月9に!


トラックバックを頂いて知りました。東野圭吾さんの短編シリーズ『探偵ガリレオ』が10月からフジテレビでドラマ化です。推理小説は先に読んじゃうと犯人がわかっちゃいますが、かなりアレンジされていそうな気がします。だから読了しても楽しめそう。主演福山雅治、共演柴咲コウ。柴咲コウの刑事役からして原作にありません(笑)。

東野さんは映像化にあたって原作にこだわらなくてもいいと考えていらっしゃるようなので、この際原作にないストーリーも追加して長くやって貰いたい。化学トリックは映像で見たいものが多かったので楽しみです。

でもフジのことだから、ドラマで人気が出たら映画化『容疑者X』へと続くんだろうなあ。それはそれで楽しみですが。
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北方謙三さんの歴史物

北方謙三さんの小説が好きなんですが、彼が歴史物に転向してからは縁遠くなりました。もともと歴史って苦手だったしね。なんかピンと来ない。しかし最近、ふと『林蔵の貌』を読んでみたら面白かった。人物が生き生きとしてる。地名がわかるし風景もわかるからなおのこと面白い。

ひき続き『日向景一郎シリーズ』を読んでいます。男臭いです。剣士物なんですけどね。斬ってるか抱いてるかどっちかなんですね。なんかもう男の憧れ的世界。なるほどね、こんな世界は現代日本を舞台にしちゃ書きにくいだろうな。というわけで、これからもガンガン読んでいこうと思います。
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藤原伊織さん死去

ハードボイルド、ミステリー作家の藤原伊織さんが本日午前に亡くなりました。
朝日新聞
テロリストのパラソル、シリウスの道が良かった。もっともっと読みたいと思いましたが、還暦直前になくなってしまいました。現代日本を書く数少ないハードボイルド作家のひとりでした。残念です。

シリウスの道

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白夜行


白夜行

白夜行

集英社


 

被害者の少年と容疑者の娘。その秘密に近づいた者は殺される。二人が巧みに操る運命の糸により翻弄される人々。一気に読ませる長編ミステリー。

びっくりした。怖かった。こんな人が回りにいたらどうしよう。いや、もしかしたら居たかもしれない。あの時の不幸は誰かが仕組んだことかもしれない。そう思わせるほどの新しい恐怖体験です。この小説ですごいところは、主人公であるはずの二人の心理描写がないんです。すべて第三者の視点で語られ、二人の見えない糸が結ばれている。だから先のストーリーが気になって仕方ない。
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化生の海


化生の海

化生の海

新潮社
北海道、北陸、九州……北前船が結ぶ血脈!



娘の学資を得るために外出したのち、日本海で遺体となって発見された父。それから5年、浅見は捜査の進捗に失望する母娘を訪ね、捜査をはじめた。余市から松前に向かった被害者が、なぜ加賀で発見されたのか。捜査線上に浮かんだ北前船ルートを追って、浅見は北海道、北陸、下関、福岡へ。一体の人形が導く真相は、化生の海に眠っている……。
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容疑者Xの献身


容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

文藝春秋
探偵は物理学者、犯人は数学者。動機は愛。



友人の薦めで東野圭吾氏の小説を読み始めました。短編の推理小説集『探偵ガリレオ』と『予知夢』。刑事の草薙が怪奇現象が絡む難事件に遭遇し、親友であり大学の物理助教授の湯川がその謎を科学的に解いていく、という話。突然人の髪が燃え上がる事件、本物の死体から作られたアルミのデスマスクなど、奇怪な事件をビシッと解決してくれます。その草薙と湯川のコンビが挑む殺人事件。探偵ガリレオシリーズ初の長編です。
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シリウスの道


シリウスの道〈上〉

シリウスの道〈上〉

文藝春秋
広告業界を舞台に一気に読ませるハードボイルド



広告代理店の営業職、辰村。第一線で活躍する彼の心の奥に、封印しておきたい過去があった。それは幼なじみの少女を守るために、親友と企てた事件だった。それから25年、秘密にしていた過去を暴く脅迫状が届く。それも、クライアントのキーマンの元に……。
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しまなみ幻想


しまなみ幻想

しまなみ幻想

光文社
事件を追う光彦。亡き母の遺志を継ぐ少女。瀬戸内に眠る衝撃の真実とは!



母はあの橋に殺された−−。しまなみ海道の橋をフェリーから見上げる少女。母の自殺に疑問を持った少女は、ピアノの先生の友人浅見光彦に出会う。この風変わりなおじさんは、趣味で母の死の真相を調べ始めた。それを不快に感じつつも、やがて浅見の正義感に惹かれていく。青い海と緑の島が連なる瀬戸内海を舞台に、ミステリーは静かに幕を開けた。


愛媛県知事からの執筆要請という良い機会を得て書かれた作品です。その経緯から、宣伝臭が強すぎるという批判もあるようです。たしかに、美しい風景、快適な宿、うまい飯というツボを押さえてあり、そのまま2時間ドラマになりそう。しかし、全体的にゆったりとストーリーが進み、解決部分で一気に解決へ向かう展開は見事。ラストもしっかり泣かせてくれました。

私もこの春に四国を旅して、今治についてもちょっとは書きましたが、ここまで詳しい描写はできませんでした。細かい取材が行き届いています。良い旅をしたな、という読後感でした。
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贄門島


贄門島〈上〉

贄門島〈上〉

文藝春秋
横溝正史的な新境地。映画化希望。


内田康夫さんの浅見光彦シリーズ。探偵小説の寅さん的存在で、マンネリなんだけど新しい。さて、今回は今までの浅見光彦シリーズとは異なる雰囲気を持っています。まず、タイトルになっている島が実在していないこと。もちろん小説の中では存在しているわけですが、島ひとつ、村ひとつが地域から独立していて、島ぐるみで秘密を持っている。浅見は事件を追ううちにその秘密に迫っていき、島の人々から嫌われてしまいます。
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煤煙


煤煙

煤煙

講談社



三国志や水滸伝など、歴史文学に手を広げている北方謙三さん。現代物はやめちゃったと思ったら、そうでもないみたい。というわけで文庫の新刊です。
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チェルシーテラスへの道

近所の居酒屋で晩飯をむさぼりつつ特捜最前線を鑑賞。今回は大滝秀治がよかった。あの年だとアクションはできないからね。心理戦でじっくり犯人を落としていく。刑事魂ですな。

ところで、店員の若い女の子とイイ女が使うべき言葉という話になった。接客業なら、言い寄ってくるシツコイお客さんに対しては、相手を傷つけない、上手な切り返しができなくちゃいけない。語彙を増やすというか、そういうトークのヒントは、映像ならアメリカのコメディドラマあたりにある。でも言葉としてきちんと理解するなら、小説をいっぱい読むといいでしょう。
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鯨の哭く海[小説]



旅ライターの浅見光彦は捕鯨問題の取材で南紀を訪ねる。くじらの博物館で奇妙な事件を目撃するが、警察も博物館もその事実を何事もなく終わらせてしまう。その事件は、過去にこの街で起こった未解決事件を想起させた。独自に捜査を進める浅見、そして浮かび上がる秩父の殺人事件。ふたつを結ぶ線……。
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『蚊トンボ白鬚の冒険』/藤原伊織

『のらり』の連載を先行執筆中。2月の旅なのに、掲載終了は7月末になりそうだ(笑)。

2本目を書いたところで気分が滅入ってきたので、7割ほど読みすすんでいた『蚊トンボ白鬚の冒険』を一気に読了。
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配管工の達夫の頭に蚊とんぼが寄生する。その直後、達夫は不思議な筋力を身につける。達夫はその力で、アパートの隣人・黒木のピンチを救った。しかしそれがきっかけで、デイトレーダー黒木のトラブルに巻き込まれる。その災いは"押しかけ恋人"の真紀にも降りかかる……。
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『さらば長き眠り』

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本当は“さよなら”と言っておくべきだった。私は"さよなら"という言葉をうまく言えたためしなど一度もないのだった。そんなことを適切なときに言える人間とはどういう人間のことだろう。

新幹線の車中でここまで読んでやっと気付いた。この本は前に一度読んだ。発表作が少ない原リョウという作家の作品は、すべて文庫で読んだ気がしたけれど、新刊のエッセイの隣に並んでいたのでうっかり買ってしまった。なんとなく既視感のある情景が多かったけれど、この文章で決定的。この文にかなり共感したことを覚えている。
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くらやみに星をひろえ



ハードボイルド作家の北方謙三さんは、ときどき気まぐれな本を書きます。『雨は心だけ濡らす』『風の中の女』の2作だけ、女性が主人公という珍しいハードボイルドを書いています。歴史小説も気まぐれだと思ったんだけど、それはライフワークになっているようです。

『くらやみに星をひろえ』は児童文学。絵本『シロは死なない』に続く異色のこども向け作品です。
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(感想)秋田殺人事件

秋田で第三セクターの汚職事件が発生。人事刷新に揺れる秋田へ向かう敏腕女性官僚、望月の元へ汚職絡みの殺人事件を告発する手紙が届く。相談を受けた警視庁の浅見刑事局長は弟の光彦を私設秘書として随行させる。浅見光彦シリーズ異色の展開、スーツを着た探偵が事件の闇に挑む!

僕は内田康夫著作サスペンス小説『浅見光彦シリーズ』が好きで、文庫版はすべて読んでいると思ってた。内田氏は単行本→ノベルス→文庫になる過程で手を入れるタイプの作家なので、最終形態の文庫で読んでます。ところがどうもこれは見過ごしていたらしい。『地名+殺人事件』というタイトルは内田氏の初期の作品に多く、最近作ではないと思いこんでいたようです。
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