天空の蜂
自衛隊の最新鋭輸送ヘリが盗まれた。ヘリは原子力発電所上空に留まり、犯人たちは「要求が叶わなければヘリを落とす」と表明した。最先端の技術者と老刑事が解決に全力を尽くす。燃料切れのタイムリミットは10時間!
推理小説でデビューした東野圭吾氏は、推理作家ではない。もっと自由なミステリー作家です。『白夜行』では謎の男女の数奇な人生を描写し、『殺人の門』では悪徳商法と狡猾な友人に翻弄される男の人生を描き、『手紙』では殺人犯の家族の葛藤を通して罪と償いの真実を書きました。『秘密』では家族愛を深く追求しています。ただ、作品には共通した部分もあって、最後にとっておきのカードを出して読者にドーンと印象づける。この切り札テクニックが東野作品の魅力です。
さて、「天空の蜂」ですが、テクノロジーに長けた犯人グループに対して、アナログな老刑事が迫っていく課程が好対照です。しかも直接対決はナシ。地道に自分の足で犯人を追いつめる。これが見所のひとつ。原発の恐怖と電気に頼った人間への警鐘、社会派ミステリーという見方も多い作品ですが、私は老刑事にもっとも惹かれました。
それよりも何よりも、東野圭吾氏の引き出しの多さに驚きます。真保裕一さんのホワイトアウト、福井晴敏さんの亡国のイージスを楽しめた人にはオススメです。タイムリミットサスペンスとしては、新幹線大爆破やスピードに匹敵する面白さ。人質救出のハラハラする場面もいい。映画化して欲しいです。
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後半のスピード感は読み応えがありました。