贄門島
内田康夫さんの浅見光彦シリーズ。探偵小説の寅さん的存在で、マンネリなんだけど新しい。さて、今回は今までの浅見光彦シリーズとは異なる雰囲気を持っています。まず、タイトルになっている島が実在していないこと。もちろん小説の中では存在しているわけですが、島ひとつ、村ひとつが地域から独立していて、島ぐるみで秘密を持っている。浅見は事件を追ううちにその秘密に迫っていき、島の人々から嫌われてしまいます。
今回は今は亡き見の父の遭難を救ってくれた美瀬島へ行くところから始まります。父か残した謎の言葉から、その島には生け贄の風習が残っているのではないか、と浅見の好奇心をかき立てます。そして、偶然に浅見と同行した週刊誌記者が死亡。さらに、父の遭難に同行していた議員秘書も小田原で殺される。このふたつの地点は、陸路だと遠いけれど、海だと一直線の最短ルートでした。
少しずつ謎が明かされる課程、その謎守るための殺人。さらには女性教師の失踪なども絡んで事件は複雑化。そこで浮かび上がる歴史、島の秘密。かなり大きなテーマに浅見は戸惑います。しかし、ラストには未来への希望がかいま見えて、こんな島があったらいいな、とまで思わせる。なんとなく横溝正史的な世界観を感じさせます。
今回はヒロインがとても魅力的。ドラマ化するなら誰がやるのかなあ。けっこう勇気が要ると思いますが。浅見光彦ファンの女性はドキドキしちゃうでしょうね。あのシーンはカットされちゃうかな。いやむしろ、このスケールはドラマじゃもったいない。映画化してほしい。それだけのテーマがあると思います。
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