時生
遺伝病の可能性を覚悟して結婚したふたり。運命は皮肉にもひとり息子の命を奪おうとしていた。その時、夫は妻に語り始める。「俺、実は息子に会っているんだ。20年前に……」
シリアスな場面から一転、本編とも言うべき回想物語ではスピーディな展開です。息子がタイムスリップしたという設定は最初から明かされています。ネタバレっぽいですが、それが読者の視点を先へ先へと向かわせています。主人公は相棒つまり未来の息子と共に、失踪した恋人を追います。しかしこの恋人は息子の母親ではありません。読み手はハッピーエンドを期待しつつ、それでは物語の辻褄が合わないことに戸惑うわけです。どうなるんだろ、どうなるんだろ、と思いつつサスペンスを楽しみ、最後にドーンと泣かせてくれます。小説を読んで泣くなんて久しぶり。ゲームショウの帰り、京葉線の電車の中で泣きそうになって困りました。おすすめです。
COMMENTS
この物語って、最後の1行の為だけに存在していたんじゃないかと思いました。
あの一言がすべてを肯定していましたね。