鯨の哭く海[小説]
旅ライターの浅見光彦は捕鯨問題の取材で南紀を訪ねる。くじらの博物館で奇妙な事件を目撃するが、警察も博物館もその事実を何事もなく終わらせてしまう。その事件は、過去にこの街で起こった未解決事件を想起させた。独自に捜査を進める浅見、そして浮かび上がる秩父の殺人事件。ふたつを結ぶ線……。
ハードカバーの新刊がいくつも出ているのに、なぜか文庫で読んでいる浅見光彦シリーズです。久々の新規文庫化は『鯨の哭く海』でした。秩父の羊山公園は僕も行ったことがあって、秩父鉄道の紀行にも書きましたが、さすがに内田先生の描写は細かい。今回も旅をしている気分になれます。
今回は秩父と南紀を結ぶという意外性が面白い。もっとも、ノルウェー貿易振興協会を検索すると本書のネタしか出てこないので、無理矢理秩父にしちゃった感もありますが、きちんと裏付けを書いているので矛盾していません。でもたぶんココの辻褄合わせは苦労しただろうな。
背美鯨の親子と登場人物をだぶらせて悲劇を盛り上げていく部分が印象的です。私には泣ける要素はありませんでしたが、女の子を持つお母さんならきっと泣けるでしょう。
そうそう、今回はヒロインとの絡みが少ないな。ヒロイン無くてもいいくらい。2時間ドラマ的には必要なんでしょうけれど(笑) あと、鈴木刑事のキャラが昭和時代の刑事ドラマっぽくていいです。ドラマ化するなら誰かなあ。
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