【読書】夜明けの街で
俺には優しい妻とかわいい娘がいる。不倫なんて馬鹿がやることさ。そんな男に生まれてしまった恋心。しかし、彼の不倫の相手は殺人事件関係者だった……。
家庭と恋の両立に悩み、そこに殺人事件が絡んで戸惑う。男って馬鹿だなあとニヤニヤできるサスペンス。夫であり父親であるという理性を保ちつつ、どんどん恋人に傾倒していく主人公。そこには男として共感できる部分が多い。なんたって相手は若く、意地っ張りで、暗い秘密を抱えている。惚れてまうやろって感じ。
好きになったら相手に関することは何でも知りたい。でも彼女の場合は特殊。なにしろ実家が殺人事件の現場だったから。恋の進展とともに近づく時効。単なる不倫恋愛物語ではなく、結末には東野作品独特のビックリ箱的な種明かしが用意され、ミステリーファンを裏切らない。
東野さんは白夜行などで魔性の美女を登場させるけれど、今回のヒロインもそれに近い。女性にとっては、主人公の妻にしても愛人にしても、こんなに都合のいい女なんて……と思うでしょう。しかし、そこにも納得できる答えがちゃんと用意されている。いやあ、結末も意外だし、この物語の後の主人公の運命も気になって仕方ないです。女って怖い……。