『あなたへ』
高倉健さんの映画、『あなたへ』を観ました。妻をなくした刑務所の教務官が、遺骨を散骨するために富山から長崎・平戸へ愛車で旅に出る……という話。
物語はふたつのミステリーが織り込まれています。ひとつは、妻の絵手紙。2通あって、ひとつはすぐに渡されるけれど、もう一通は仲介者が平戸郵便局留めで投函してしまう。そこになんて書いてあるか。取りに行かないと答えがわからない。
もうひとつのミステリーは、その物語が始まったことを観客が気づかない。巧みに伏線として隠されていて、ラストシーンでふわっと浮き上がる。これが見事。その時の主人公の判断がいいんだなあ。
冒頭、健さんが真っ直ぐ歩かない。うわ、老いたな……80だもんな……と思ったんです。6年間の空白は、もしかしたら後遺症の残る病気かと。それ違うみたい。演技でした。置いた男の居住まいを、かるく足を引きずってみせていました。すごいなー。
今回は鉄道と絡む映画ではない、思ったんだけどあちこちで鉄道が登場して、時間や時代の経過を暗示しています。だからテロップで地名をだしたり、年数を出したりしない。そこもかっこいい。ちゃんと映像で表現してる。丁寧な絵作りをしていると思いました。