Railways
一流メーカーの中枢で出世街道を歩む主人公。出世を約束され、リストラ担当として同期入社の親友が所管する工場を閉鎖。クールでドライな性格に妻や娘とも疎遠になりつつあった。そんな時、故郷の母が病に倒れる。実家に帰った男を追うように、さらなる悲報が届く。仕事中心の人生に立ち止まり「俺は夢に向かって生きていたか」と自問する主人公。そして彼は、少年の頃に憧れた「電車の運転士」に転職を決意した……。
お行儀の良い映画、という感想がピッタリかもしれません。いやな思いをするシーンもないし、ハラハラドキドキな展開もない。ただひたすら、ドキュメンタリーのように主人公の転機を追う展開でした。良い映画なんだけど、ちょっと足りない気もするんだな。
もしこの題材でハリウッドが作ったら。
主人公は親友にもっと冷酷な仕打ちを与え、家族からは突き放され、優しい母親からも見離されたことでしょう。転職した後も苦労の連続。過酷で厳しい訓練にエリートのプライドはズタズタにされ、しかし元の会社からは突き放されて戻るべき場所もなく、悲嘆にくれつつも夢へ向かって黙々と努力するしかない。しかし、その姿に心打たれた娘と妻が、やがて主人公の最大の理解者として応援する。ついに念願かなって列車を走らせる主人公は、病院を通過する際に、最期を迎える母へ向かって長い汽笛を響かせる……END。という感じになったと思う。こういう展開だと、ラストに主人公が妻へ投げかける台詞の意味が重くなって、ここでみんな号泣できたはずなんだ。人生と電車をかけた、とってもいい言葉なんですよ。