使命と魂のリミット -東野圭吾-
嘘だったかもしれないけど、
昨日までは恋人だった……
動脈瘤除去手術で父親を失った夕紀は、父親の死の真相に近づくために研修医となり、父親の執刀医、西園に近づいた。しかし夕紀は母親と西園の再婚を知り動揺する。そんなとき、大学病院に脅迫状が届く。
「過去の医療過誤をすべて公表し、謝罪せよ」
犯人の目的がわからぬまま、夕紀と西園はVIP患者の動脈瘤除去手術を開始した。それを待っていたかのように犯人は実力を行使する。命を奪おうとする者と、守ろうとする者、それぞれの戦いが錯綜する……。
東野圭吾作品の久々の文庫化です。今回は病院を舞台としたサスペンス作品でした。巧みな伏線を張って最後にびっくりさせる「東野トリック」がありません。いや、もしかしたらラストの西園の告白がそうなのかもしれないけど、静かなインパクトでした。「さまよう刃」のように、時系列に沿って進行する素直なヒューマンドラマです。序盤から結末に向かって順調に盛り上げてくれるので、ラストは感動します。
でも、さんざんメカニック寄りの仕掛けを作っておいて情で解決しちゃうってのも「うーん」なんだよなー。あと、自動車事故のエピソードが出てきますが、それがちょうどいまアメリカで問題となっている件と重なります。すごいタイミングですね。ハードカバーが4年前の発売なので、東野氏には予知能力があるのかも。そこにビックリです。
ヒガシノ流トリックがないけれど、それだけに映像化しやすいともいえます。2時間ドラマになったら見たいな。