空手 (くうしゅ)
「いらっしゃいませ。こちらへ」
カウンターに案内された。
バーテンダーの目が、久しぶりですね、と言っていた。常連客に対して馴れ合わない。初見の客を特別扱いしない。そういう店だった。隣には若いカップルがいて、壁際のテーブル席には年寄りが談笑している。銀座の一等地にある老舗の名前が聞こえた。老人達はこのあたりの老舗の主たちだ。銀座というより新橋の外れのこの店は、昔から地元の客が多かった。
「ジントニック」
ほとんどトニックウォーターではないか、と思うくらい、アルコールの薄いカクテルが出てきた。私が下戸であることを、まだ覚えていてくれた。
隣のカップルが席を立ち、続いて老人達が大声で話しながら出て行った。耳が遠いから大声になる。しかし、元気な証拠でもある。この店はちっとも変わっていない。
カウンターに案内された。
バーテンダーの目が、久しぶりですね、と言っていた。常連客に対して馴れ合わない。初見の客を特別扱いしない。そういう店だった。隣には若いカップルがいて、壁際のテーブル席には年寄りが談笑している。銀座の一等地にある老舗の名前が聞こえた。老人達はこのあたりの老舗の主たちだ。銀座というより新橋の外れのこの店は、昔から地元の客が多かった。
「ジントニック」
ほとんどトニックウォーターではないか、と思うくらい、アルコールの薄いカクテルが出てきた。私が下戸であることを、まだ覚えていてくれた。
隣のカップルが席を立ち、続いて老人達が大声で話しながら出て行った。耳が遠いから大声になる。しかし、元気な証拠でもある。この店はちっとも変わっていない。