『さらば長き眠り』
本当は“さよなら”と言っておくべきだった。私は"さよなら"という言葉をうまく言えたためしなど一度もないのだった。そんなことを適切なときに言える人間とはどういう人間のことだろう。
新幹線の車中でここまで読んでやっと気付いた。この本は前に一度読んだ。発表作が少ない原リョウという作家の作品は、すべて文庫で読んだ気がしたけれど、新刊のエッセイの隣に並んでいたのでうっかり買ってしまった。なんとなく既視感のある情景が多かったけれど、この文章で決定的。この文にかなり共感したことを覚えている。