しまなみ幻想
母はあの橋に殺された−−。しまなみ海道の橋をフェリーから見上げる少女。母の自殺に疑問を持った少女は、ピアノの先生の友人浅見光彦に出会う。この風変わりなおじさんは、趣味で母の死の真相を調べ始めた。それを不快に感じつつも、やがて浅見の正義感に惹かれていく。青い海と緑の島が連なる瀬戸内海を舞台に、ミステリーは静かに幕を開けた。
愛媛県知事からの執筆要請という良い機会を得て書かれた作品です。その経緯から、宣伝臭が強すぎるという批判もあるようです。たしかに、美しい風景、快適な宿、うまい飯というツボを押さえてあり、そのまま2時間ドラマになりそう。しかし、全体的にゆったりとストーリーが進み、解決部分で一気に解決へ向かう展開は見事。ラストもしっかり泣かせてくれました。
私もこの春に四国を旅して、今治についてもちょっとは書きましたが、ここまで詳しい描写はできませんでした。細かい取材が行き届いています。良い旅をしたな、という読後感でした。