UDON
「ここにあるのはうどんだけ。夢がない」と、実家のうどん屋を飛び出したものの、ニューヨークで挫折した主人公、松井香助。しょんぼりと実家に帰った香助に、父は厳しく当たる。香助は友人にタウン誌のアルバイトを紹介してもらった。そこで、地元では当たり前の食べ物「うどん」にスポットライトを当てようと奮闘する。
東京にも飛び火したうどんブーム。それが成功し、収束するまでの狂想曲と、香助自身の再生、実家のうどん屋の再生を重ねた物語。1本で3つのサクセスストーリーを楽しめるお得な作品でした。途中、飛躍しすぎな場面もありますが、それがちゃんと伏線になっている。もっとこうすればいいのに、という感想はなくて、素直に楽しめました。うどんにひっかけて「喉ごしの良い映画」と評しておきます。
[UDON公式サイト]
以下、ネタバレありますので気をつけて。
踊る大捜査線のスタッフが結集、ということで、"踊る"的なオマージュがたくさんあります。香助が帰るシーンはまさにフーテンの寅さん。まさかこのパターンで連作するつもりじゃ……と思わせる(笑)。冒頭の本四連絡橋の場面は踊る大捜査線のレインボーブリッジそのもの。香川出身の本広監督は、もしかしたらこの橋を撮りたい、というきっかけでこの1本を作ったのかもしれません。
前半のサクセスストーリーがあまりにもトントン拍子だったので、きっとこれをひっくり返すような大事件やライバルが登場するものだと期待してしまいました。しかし実際はブームの収束をサッと流して、家、という小さなテーマに急転換します。でもそこがよかった。父から子へと伝わるメッセージに感動したし、とくに小学校のシーンがお約束で、先が読めてるのにやっぱり泣ける。
最後の香助の選択も、ぼくは正しかったと思います。もったいない、と思うひともいるでしょうね。でも、笑顔を作るとは何か、こつこつとやり遂げることは何か、成功するとはなにか、ちゃんと理解して自信を持てた。そこに香助の成功があるんです。
あとね、小西真奈美さんはやっぱりかわいいね。彼女の方向音痴というキーワードは、ラストでちょっと弱かったような気がします。ラストの台詞は、やっぱり香助に直接言ってほしかったなあ。
そうそう、物語のスケールとか、映像面の迫力はたいしたことなくて、別に映画館で観なくても良いかな。この映画を見る楽しみとして、スクリーンで描かれる香川にも期待していたんですが。残念ながら、冒頭のマッンハッタンの夜景に負けちゃった。全体的に黄砂が舞っているような景色で、香川の美しさをきちんと表現していなかった。それがとっても残念。時期のせいもあるんでしょうけど。せっかく冒頭で寅さんのオマージュをしたなら、山田洋次的な、のほほんとした風景描写があっても良かったと思います。なんか妙なカットバック入れちゃって、そのこだわりの意図がわかりませんでした。
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