すぎやまの日々

鉄道&Eスポーツライターの日常とか。

消費型コミュニケーション2

コミュニケーションには生産型と消費型があって、ネットのコミュニティのほとんどは消費型だよって話の続きね。時間と通信料を消費して満足を得る行為。まず、そこに気付いているか否か、これが楽しいネットライフかそうでないかの分かれ目になるよ。

まず、ネットコミュニティに投稿する楽しさについて考えると、前回に挙げた「ポチッと押してスッキリ」に帰結する。もうね、これに尽きる。「俺はネットに書いたぜ、みんな見てくれ、どうよどうよ」って心境だ。もちろん俺のブログもそう。そして、この楽しみは、掲示板が穏やかに進行しているときも、炎上しているときも、本質的には同じ。「ポチッと押してスッキリ」。これをまず押さえとこう。

それに対して賛同や善意のレスがつくともっと嬉しい。だけど、反論や煽りが返ってくると悔しい。そうじゃないかな? で、反論や煽りに対して反撃したくなるよね。「あんたにそんなこと言われる筋合いはない、不愉快だ」とか書いちゃう。でも、それって本当に不愉快だけかな? 違うよってこと。不愉快だって書いて、「ポチッと押してスッキリ」してるわけでしょ。つまり、楽しんでるわけですよ。あなたは書き込みを楽しんでいらっしゃる。間違いない。つまりここではこうなってる。
 
「(炎上の原因となる発言)」  を書いた人
 →ポチッとしてスッキリ状態
「てめーナニ言ってんだ」  って書いた人
 →ポチッとしてスッキリ状態
「訂正すべきだ」      って書いた人
 →ポチッとしてスッキリ状態
「バカじゃねーおまえ?」  って書いた人
 →ポチッとしてスッキリ状態
「おまえらにそんなこと言われたくないね」
 →ポチッとしてスッキリ状態
「不愉快だ」        って書いた人
 →ポチッとしてスッキリ状態

つまり、みなさん楽しいわけですよ。楽しいから書いている。炎上ブログや掲示板って、ほんとに面白い。みんな楽しそうだもんね。だってさ、ほんとに不愉快だったら、不愉快な掲示板に付き合ってないで、自分の時間や通信料金を、もっと楽しいことに使えばいいじゃない。ケーキビュッフェのあるホテルを探すとか、旅に行きたい場所の情報を見るとか、アマゾンや価格コムでデジカメの値段を見比べたりとか。犬の散歩に行くとか、必殺仕事人2009を見るとか、もっと穏やかで煽りの少ない掲示板に行くとかね。

それをしないで、「不愉快だ」って書き込むってのはさ、そうした身の回りのあらゆる楽しさよりも、「ポチッと押してスッキリ」のほうが楽しいからですよ。あなたは気付いていないかもしれないけど、あなたは楽しんでる。消費型コミュニケーションですから。参加しなくちゃ稼げないってわけじゃないでしょ。楽しくないならやらなくていいことをやるってのは、そりゃ楽しいからですよ。

不愉快と悔しさのあまり、ものすごい長文を書く人っているでしょ。あれも実は無意識に楽しんでるんだよね。不愉快をオカズにして夢中になって、おなかいっぱいになるまでタイプし続けるんだね。そんなに長く書いたって誰も丁寧に読んでくれないのにね。だって相手は「ポチッと押してスッキリ」したいだけなんだから。長い文の中から、ポチッとしてスッキリできそうなところを見つけて、そこだけ反応して「ポチッと押してスッキリ」する。それを見てまた長文を……楽しそうだと思いませんか。

話は変わるけど、昔、ユナイテッドテクノロジーって会社がウォールストリートジャーナルに「アイデアを名刺の裏に書ききれないなら、君にはアイデアがないってことだ」って広告を出していたよ。人気のメッセージ広告シリーズで、日本では『アメリカの心』ってタイトルで本になってる。長文は嘲笑の対象にしかならない。掲示板のシステムが規定した文字数を超えたので続きを書きます、なんて書く人いるでしょ、もうバカ丸出しだな。私は要約能力がありませんと自白。本人は楽しいんだからいいけどね。

でもさ、その楽しさってのは実に小さいね。そしてあんまり賢くない。なぜかっていうと、反撃したつもりで「ポチッと押してスッキリ」しても、また次の相手の書き込みで不快になるんだから。そこを先読みできないからまた「ポチッと押してスッキリ」→「不快」→「ポチッと押してスッキリ」→「不快」となるんだよね。相手があきらめて消えてくれたら「勝った」というところなんだけど、その嬉しさってのは、散々味わった不快感と時間と通信料金に相殺されているから、見返りとしては小さすぎる。ものすごく大規模な土木工事をして花壇を造ったのに、咲いた花はタンポポひとつって感じだ。それがわかる人は賢いから炎上には参加しないね。あるいは炎上すると逃げる。逃げるってのは違うかな、ひとつ上の段に上がって見物にまわっちゃう。ちゃんと先が読めて損得を勘定できるからね。

つまり、いつまでも炎上させている人を見ると、楽しそうだなって思うんだけど、その「楽しそうだな」って感想の中には「バカだなー」って気持ちも含まれている。炎上に参加していない、いわゆるROMの人はそんな気持ちですね。でも、炎上参加者はそこまで気が回らないんだよね。「ポチッと押してスッキリ」の麻薬に憑かれてるから。炎上参加者は、自分がサイレントマジョリティに笑われながら観察されていることに気付いたほうがいいね。いや、恥ずかしくて死にたくなっちゃうから、気付かないほうが幸せかな。

なかには炎上全体を楽しめる人もいるね。「ポチッと押してスッキリ」→「不快」→「ポチッと押してスッキリ」→「不快」というサイクルを、「ポチッと押してスッキリ」→「快い」→「ポチッと押してスッキリ」→「快い」に変えちゃう人。肯定的なレスも否定的なレスも楽しめる人だな。釣り師って呼ばれる人なんだけど、最後まで釣り人で居られる人はなかなか少ないね。途中から我慢できなくなって水中に飛び込んじゃう。惜しいね。

ちなみに「ポチッと押してスッキリ」→「快い」のサイクルはどうやって作るかと言うと、いくつかのパターンを先読みすれば簡単なんだよ。「こう書くと、まともな人からはこういうレスがつくだろうな。炎上タイプはこんなこと突っ込んでくるだろうな」ってね。そしてあとは当たり判定をして遊ぶわけだ。それが肯定的なレスであっても、否定的なレスであっても、自分の想定どおりだから「快い」なんだよね。あったりぃ! てなもんでさ。炎上タイプは先読みができなくて進歩がないから、これが本当に良くあたる。だから面白くてしょうがない。あとはもうこっちの思い通りに転がってくれる。法廷劇でさ、激高するあまり自分に不利な発言をして裁判に負けちゃう人みたいだよ。あと、宗教の勧誘にも引っかかりやすいだろうなあ。知ったこっちゃないけどさ。

こんなこと書くと、俺って性格悪いね(笑)。でも、ここまで読んで不快に思う人は炎上タイプの人だけだから、まあ、お互い様ってとこかな。それどころか、俺と同じように炎上を楽しめる人は、種明かししてんじゃねーよと思ったかもしれない。それは悪かった。でもまあ、世の中に炎上タイプは居ないほうが過ごしやすいし、消費型コミュニケーションで考えてみる方法は、ネットに参加する人は知っといたほうがいいと思うんだよね。
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