【映画】ハッピーフライト
羽田発ホノルル行きの全日空チャーター便。パイロットは機長昇格のOJTに望む操縦士と鬼教官。アテンダントには初の国際便乗務で緊張する新人と厳しさで評判の先輩たち。彼らのフリート、ボーイング747-400を支えるスタッフは整備士、グランドスタッフ、オペレーションセンター、管制官など多数。そして、さまざまな事情で乗り合わせた乗客たち。平常に見えて、実はいつも非常と隣り合わせの航空業務。しかし今日は長い一日になりそうだ……。
踊る大走査線の亀山千広プロデューサーが、『ウォーターボーイズ』、『スウィングガールズ』の矢口史靖監督を起用して作った作品。脚本も矢口氏で、原作なしのストーリー。おそらくモチーフは米国の『エアポートxx』でしょう。しかし、全日空が全面サポートしただけあって、深刻なトラブルやパニックを予想される場面はなく、むしろ亀山千広氏のカラーが出ているかもしれません。つまり、本作は『踊る大空港』、『踊る大航空機』というべき仕上がりです。
それだけにとても楽しい作品でした。深い感銘や余韻はないけれど、約2時間、観客を楽しませてやろう、というサービス精神たっぷりのコメディです。これだけ笑える要素を突っ込むと、むしろ深刻なパニック要素はバランスが取れないので、結果的にはあの程度のハプニングで正解です。
本作の特長は主人公がいないこと。ストーリーは機長昇格試験のパイロットと、国際線発フライトのアテンダントを主軸としています。でも、地上スタッフ、整備士、コントロールセンターなど各部門のストーリーも楽しい。短時間で各部門のストーリーが交錯していきますが、観客が戸惑うことなくちゃんと追えるテンポになっている。上手いです。
僕は、グータラ上司の岸辺一徳さんがよかった。ここぞと言うときに頼もしい存在になる。でもちょっと抜けてる、というね。その部下の無線担当の肘井美佳さんがキリッとしてカッコイイ。惚れた。田畑智子さんのほのかな気持ちがハッピーエンドに向かうところも、とてもさりげない演出だけどよかった。厳しい整備士の奥にある温かさ、それを表現するための小学生見学者たち。まさか彼らがあんな伏線のために用意されていたとは……。本当に良くできています。アテンダントが機内食のトラブルを団結して解決する場面も良かった。
映画評サイトをいくつか見ていると、飛行機の運航とスタッフの役割について興味深い、飛行機トリビアがいっぱい、という記述が多いです。僕は乗り物好きだからたいていのことは知ってたけど、知らない人はそういうところも楽しめるでしょうね。僕は「グランドスタッフが定時出発ノルマを課せられていること」が新知識かな。ニコニコしているだけじゃなく、けっこうプレッシャーのある仕事だと思いました。
航空ファンなら、なんで羽田から国際線なんだ、しかも国際線ターミナルじゃないし、などと細かい突っ込みも入るでしょうが、ちゃんとチャーター便と言ってるから整合性は取れています。だいたい、あと何年かすれば新国際線ターミナルになるわけで、羽田の未来を先取りしたといえるでしょう。
ストーリーを追うだけならDVDを待ってもいいけれど、飛行機の迫力を楽しみたいなら映画館に行くべきです。笑えて心温まる。いい映画でした。全日空への好感度がますます上がっちゃいます。鉄道ブームの次はエアラインブームが来るかな?
それにしても、こういうノリの鉄道映画ってできないものでしょうかねぇ。
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