テレビ電話
携帯電話を買い換えた。きっかけは母の電話機のカメラ機能が壊れたこと。ふたりとも同じ機種にすれば、俺が操作を教えられるし。
今度の携帯電話はテレビ電話ができる。1分35円だったかな。
子供の頃、テレビ電話ってのはもの凄い技術で、それを見たさに逓信博物館に連れてってもらった。だけどテレビ電話コーナーは大人気で、並んでも順番が回りそうもないから、しぶしぶ家路についた記憶がある。
それがいまじゃ携帯電話に搭載ですよ。手のひらにのっかってますよ未来が。
今度の携帯電話はテレビ電話ができる。1分35円だったかな。
子供の頃、テレビ電話ってのはもの凄い技術で、それを見たさに逓信博物館に連れてってもらった。だけどテレビ電話コーナーは大人気で、並んでも順番が回りそうもないから、しぶしぶ家路についた記憶がある。
それがいまじゃ携帯電話に搭載ですよ。手のひらにのっかってますよ未来が。
昨日、さっそく母から電話があった。携帯電話の画面に『テレビ電話』って書いてある。すげーよかーちゃん。もうテレビ電話をマスターしたのか。俺なんかまだ怖くて触ったことないのに。
「もしもし」
あれ、画面が真っ暗だ。
「ああ、淳? あのね、明日からそっち行きたいんだけど」
「はいよ。そりゃ良いけど、テレビ電話なのに顔が見えないよ」
「あらそう? おかしいわね」
「俺の顔みえる」
「見えないわよ。どこに見えるの?」
おかしいな、俺の顔は小さい窓に映ってるから見えるはずなんだけど。
「んー、じゃ、初期不良かな。まあいいや。明日来るんなら、ドコモへ行って交換してもらおう」
「そうね」
で、さっき母が来た。テレビ電話をかけてもらった。
「ねぇ、どこに映るの?」
「やっぱり真っ暗だなー」
ふと見上げると、母が電話機を耳に当てていた。
私の携帯電話の真っ暗な映像は母の耳の穴だった。
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