[感想] 暗黒の城 ダーク・キャッスル
ゲーム開発スタッフの不可解な自殺。同僚で主人公の優作は、恋人にもその兆しがあると気付き、ジャーナリストの友人とその原因を探る。そこには封印されたDNA実験と、それを悪用する大きな組織の陰謀が隠されていた……。
ご近所さんの知人が小説を書いて小松左京賞を取ったそうです。舞台がゲーム業界だそうで貸してもらって読んでみました。先に結論を書くと、すごく良かった! オススメです。サスペンス小説が好きな人は読んでみてください。さらりと読める文章にもかかわらず、読後に深い余韻が残りました。不思議なことに、小説を読んだ感動よりも、アカデミー賞降補の映画を見終わったような感覚。ゲーム好きの人に言うと、ファイナルファンタジーの初期作品のエンディングの余韻に似ています。
ご近所さんの知人が小説を書いて小松左京賞を取ったそうです。舞台がゲーム業界だそうで貸してもらって読んでみました。先に結論を書くと、すごく良かった! オススメです。サスペンス小説が好きな人は読んでみてください。さらりと読める文章にもかかわらず、読後に深い余韻が残りました。不思議なことに、小説を読んだ感動よりも、アカデミー賞降補の映画を見終わったような感覚。ゲーム好きの人に言うと、ファイナルファンタジーの初期作品のエンディングの余韻に似ています。
ゲーム業界に近いところで仕事をしていると、舞台がゲーム業界で、コンピュータが登場して……という作品の場合、どうも胡散臭く感じることがあります。実際の業界と違いすぎてリアリティを感じなくなったり、なんでも解決しちゃうハッカーが出てきたり……。正直にいうと読み始めはまさにそんな印象です。
ああ、またこの手の話か……、と思いました。でも、借りたからには返すときに感想を言わなくちゃな……と16ページまで我慢して以降、テンポの良さ、展開のスピード感にリードされて一気に読了。たしかにゲーム業界の描写については引っかかる部分がある。そういえばパックスパワーグローブってあったな、とか、ゲーム脳っぽい理屈はもう聞き飽きたよ、とか。都合のいいスーパーハッカーも登場しちゃう。しかし!
そんなことはどうでもいいや、と思えるほどのパワーでストーリーが盛り上がっていきます。細かい突っ込みどころなんて、作者がこの作品に与えたテーマと比べたら些細なこと。ぐいぐいと物語に引きこまれて、やがて、とんでもないほどの大きな喪失感がやってきます。コツコツと積み上げてきたものがガラガラと崩れ落ちていく。なんで! 作者さん、なんでコンナことするの!
中盤以降はこの喪失感を抱えつつ、やはりテンポの良いストーリーを追っていきます。作者さんどうするのよコレ。どうやってまとめるの? そしてエンディング。すごいと思いました。すべてはこのメッセージを活かすための演出だったんです。まいった。そして、喪失感のどん底から立ち上がる強い希望。人間とは何か、という哲学的なテーマが、スカッと心に染み込んでいきました。ああ、俺、人間として生まれて良かった!
私はこの小説を今回の旅に持って行きました。のと鉄道の帰り道、珠洲から金沢まで各駅停車を4時間も乗り継ぐ車中でした。旅に出ていると感受性が高まるし、夜の列車の中で妙に集中したし、徹夜明けの倦んだ脳で読んだせいもあるでしょう。かなり大袈裟な反応だったかもしれませんが、私はこの小説が好きだし、この作者の次の作品を読んでみたい、と思いました。
そしてこの小説が与えた喪失感は、実は翌日の旅の間も引きずっていました。しかし、そんなとき、小説の中で登場するゲームエンディングの言葉を思い出すと、喪失感がとても心地良い余韻に変換されます。その心地良さ。いい本を読んだなあ。
借りて読んだけど、あとで買ってもう一度読み返すかも。
【暗黒の城(ダーク・キャッスル)を買う】
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ちなみに、第2作の短編が小松左京マガジンの17巻に載っています。
link (www.iocorp.co.jp)
見つけたら読んでみよう!