迷走の塔
「突然お呼び出ししてすみません」
「どんなお話でしょうか」
里恵は不安そうな表情を浮かべていた。見知らぬ男に呼び出されたわけだから不審に思うのは当然だ。剛はすぐにそれを察して用件を急いだ。
「堺さんとはどんなご関係でしたか」
「えっ」
「亡くなられた堺珠男さんですよ」
「同僚、です」
里恵は小さな声で答えた。表情がさらに硬くなった。剛を警察の人間だと思ったようだ。
「どんなお話でしょうか」
里恵は不安そうな表情を浮かべていた。見知らぬ男に呼び出されたわけだから不審に思うのは当然だ。剛はすぐにそれを察して用件を急いだ。
「堺さんとはどんなご関係でしたか」
「えっ」
「亡くなられた堺珠男さんですよ」
「同僚、です」
里恵は小さな声で答えた。表情がさらに硬くなった。剛を警察の人間だと思ったようだ。
「仕事以外のお付き合いがありましたよね」
里恵は黙った。珠男は自殺した。しかし、職場では殺されたのではないかと噂になっている。そんな時に見ず知らずの男が現れて、里恵と珠男の関係を問う。里恵はとっさに嘘をついた。
「ありません」
「え、なかったんですか」
「はい」
こんどは剛が沈黙する番だった。うーん、と唸ったまま天井を見上げる。里恵は困惑した。席を立つきっかけがほしい、と周囲を見回した。しかし、こんなときに限って知り合いが通らない。
剛が顔を戻して話を続けた。
「社内では、あなたがもっとも親しいと思ったんですよねぇ」
「……どうして」
「駅ですよ」
「え」
「堺珠男さんやあなたが所属しているチームの机には、鉄道模型の線路が敷かれていますよね」
「はい」
「あれは堺さんの趣味ですよね」
「そうです」
「あそこは6つの机が並んでいて、すべての机を周回するように線路がある」
「はい」
「堺さんが敷いたんですね」
里恵は頷いた。
「仲の良いチームですね。普通はあんなもの迷惑なのに、お互いにそんな遊びを許せるような関係ですから」
なるほど、職場での境の様子を聞きたかったのか、と里恵は理解した。
「そうです。鉄道好きは彼だけでしたが、みんなでおもしろがっていました。忙しくて神経が張りつめているときに電車が走ってくると、和やかな雰囲気になりました。ときどきアメを載せた貨車を走らせたりして」
「堺さんはそういう思いやりができる人だったんですね」
「ええ」
「彼はあなたを好きだった」
「えっ」
「違いますか」
「……」
「堺さんとあなたの机だけ、駅があるんですよ」
里恵は黙った。珠男は自殺した。しかし、職場では殺されたのではないかと噂になっている。そんな時に見ず知らずの男が現れて、里恵と珠男の関係を問う。里恵はとっさに嘘をついた。
「ありません」
「え、なかったんですか」
「はい」
こんどは剛が沈黙する番だった。うーん、と唸ったまま天井を見上げる。里恵は困惑した。席を立つきっかけがほしい、と周囲を見回した。しかし、こんなときに限って知り合いが通らない。
剛が顔を戻して話を続けた。
「社内では、あなたがもっとも親しいと思ったんですよねぇ」
「……どうして」
「駅ですよ」
「え」
「堺珠男さんやあなたが所属しているチームの机には、鉄道模型の線路が敷かれていますよね」
「はい」
「あれは堺さんの趣味ですよね」
「そうです」
「あそこは6つの机が並んでいて、すべての机を周回するように線路がある」
「はい」
「堺さんが敷いたんですね」
里恵は頷いた。
「仲の良いチームですね。普通はあんなもの迷惑なのに、お互いにそんな遊びを許せるような関係ですから」
なるほど、職場での境の様子を聞きたかったのか、と里恵は理解した。
「そうです。鉄道好きは彼だけでしたが、みんなでおもしろがっていました。忙しくて神経が張りつめているときに電車が走ってくると、和やかな雰囲気になりました。ときどきアメを載せた貨車を走らせたりして」
「堺さんはそういう思いやりができる人だったんですね」
「ええ」
「彼はあなたを好きだった」
「えっ」
「違いますか」
「……」
「堺さんとあなたの机だけ、駅があるんですよ」
COMMENTS
読みやすいですか?
これで進めちゃっていいのかな。
仕事じゃありませんがww
犯人はヤス。
それも違う。