Kitano par Kitano 北野武による「たけし」
貧しい子供時代を過ごした俺にとって
困っている人を助けるって当然のことなのね。
映画監督としてヨーロッパで高く評価された北野武のロングインタビュー。フランス人ジャーナリストがフランス人に向けて書いた本だから、内容のほとんどは日本人にとって既出。北野武について報道された内容について、名誉も不名誉も含め、北野武自身が心境を語るという内容だ。だから一見、彼が日本で応じた数々のインタビュー記事の再録に見える。しかし、どれもフランスの人々には耳新しいことだから、そのぶんたけしの説明は丁寧だ。また、政治、歴史、国際的見識など、日本のインタビューではなかなか触れられない内容もあって興味深い。このフランス人ジャーナリストは、たけしの考えていることすべてを聞き出している。たけしに語ってほしい事柄について、日本人とフランス人とでは温度差があるということだろう。
とくに、たけしとアフリカとの関わりについては驚かされた。それが冒頭の引用部分だ。いままで彼が日本でほとんど公言しなかった内容である。また、本書の実現にもっとも尽力した人物として、たけし軍団のヘンな外人キャラクター、ゾマホンが出てくる。彼の経歴や活動についても尊敬させられた。あいつ、ほんとはすごいやつだったんだ! そして、たけしの友人、所ジョージも陰ながらたけしとゾマホンの活動を応援している。これにもびっくりした。まあ、彼の場合は「アメリカのバスがほしかったけど、ガレージに入らないからペナンにおいとくか」という気分かもしれない。
しかし、たけしもゾマホンも所も、ふだんは慈善活動を表に出さずにコメディアンを貫いている。そこがカッコいい。良いことをしても恥ずかしいから言わない。こういう日本人の奥ゆかしさを、はたしてヨーロッパの人々は理解してくれただろうか。
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