『ダナエ』『遊戯』藤原伊織
ちょっと余裕が出てきて、買っておいた文庫小説を読み始めた。藤原伊織さんは元電通の人。2007年に59歳という若さで亡くなりました。テロリストのパラソルというハードボイルドを読んでから、彼の小説を読み始めました。そして、この2冊で最後です。
『ダナエ』は短編集。男の枯れ具合をかっこよく書いています。長年生きてきて、あるていど人脈や豊かさも身に付いて、しかし、それを振りかざせばワガママ親父になっちゃう。では、そんな男はどのようなときに格好良く権利を行使するか。そんなテーマです。こういう男になりたいな。でも寂しいな、という。
『遊戯』は長編です。オンライン対戦のビリヤードゲームで知り合った男と女。男は毎晩、実弾入りの拳銃を抱いて寝る。女は刑事の娘。女の就職相談でふたりが出会ってから、運命が動き始めます。この話はすぐに引き込まれました。女が成功していき、それを男は遠くから見守っていた。そこに、不穏な男の陰が見え隠れする。ふたりはこれからどうなるのか。関係が進展しかけたそのとき、事件が起こります。
……作家の逝去。この作品は藤原伊織の未完の遺作でした。
50代の作家がオンラインゲームをうまく小道具していることに好感触。藤原氏は麻雀が好きだそうで、オンライン麻雀の経験をビリヤードに置き換えたのかなと思います。ああ、続きが読みたいってところで、もう読めない。とても残念。あの世で書いていてくれますかね。そしたらちょっと楽しみも残るってものですが。
併録されている『オルゴール』は挫折感たっぷりで、これも病床の作者の悲哀がこもっているようでした。
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