【映画】おくりびと
夢が叶ってオーケストラのチェロ奏者となった大悟。しかし不況でオーケストラは解散。大悟は失意のまま夢をあきらめ、妻と故郷の実家に帰った。そして見つけた仕事とは、月収50万の旅のお手伝い。いや、安らかな旅立ちのお手伝い「納棺師」だった……。
泣けました。いい映画でした。あのね、忙しかったり、アイデアが枯渇した時は、泣くといいですよ。なくってすごくストレス発散になるんですよ。あなた最近泣いてますか? 泣かされるくらいなら泣きに行きましょう。攻めの泣き。そんなときにぴったりな映画です。
だいたいね、仕事が納棺師だから葬式の場面がいっぱい出てくるワケよ。それでもう遺族の感情に触れてもらい泣きでしょう。それで、本来の物語の泣かせどころで泣くよね。死という別れがいかに悲しいか。まあ、あとは泣かせ映画の定番の夫婦愛と親子愛で泣かすわけだけど。でも笑えるところもけっこうある。それもいいスパイスだよね。甘いものに塩かけると甘さが増すみたいな、泣くものに笑いをちょっと入れるともっと泣いちゃう。いい映画です。金かけりゃいいっていうハリウッドと好対照。
まあね、ちょっと違和感があったりはする。まず、奥さんが広末で月給50万だったら、納棺師でも死体洗いでもいいじゃん。しかもボロ屋とはいえ一戸建ての家もあってさ。なんで主人公が不遇に酔ってるのかわからん。そういう性格の人もいるけどさ。あと、納棺師という職業が、普通の人々から「卑しい職業」と見なされているところ。最初のシーンで納棺師の様式美みたいなものを見せられた後で、いきなり旧友が避け始めたり、予告編にもあるシーンだけど、奥さんが「触らないで」なんて言ったり。そんなに嫌われちゃうものなの? 俺は立派な仕事だと思ったよ。月50万くれるならやるよ。そんで、みんなの長生きを心から願っちゃうね。だって仕事増えるのヤだし。
そりゃ、たまに腐乱死体があるかもしれないけどさ。っていうかあれもヘンなの。警察が現場の遺体を納棺してくれなんて言うの? 変死体はいったん鑑識へ運ぶでしょう? 医者が死亡って判断しないと埋葬許可証が出ないでしょう。
という文句もあるんだけど、まあ、納棺師という仕事に対して、本人も疑問に思っているし、世間体が悪いという部分を強調する演出なんだろうな。だからそれはいいの。成り行きで始めた納棺師に対して、夫婦が前向きに生涯の仕事として向き合っていく。そういう映画としてはもう満点だね。あと山形。山形の景色はいいね。舞台は山形県の北部です。スウィングガールズよりもずっと北。日本の田舎ってい感じが良く現れている。日本の文化、日本の景色、日本の風習。でも、それは日本だけのものではなくて、どの国でもあるものを、日本バージョンで見せているだけ。これは確かに海外受けすると思った。
この風景を楽しみたいならスクリーンで。ストーリーを追いたいならDVDまで待ってもいい。ただ、テレビ放送はおすすめしません。尺が長いのでカットされまくるだろうから。130分は短く感じた。この夫婦のこれからを、もうちょっと観ていたい。そんな余韻がまたよかった。
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