閉鎖病棟
様々な事情で家族や社会から隔離された人たちが暮らす閉鎖病棟。特異な人々たちの穏やかな日常生活。しかし、ある凶暴な患者の存在が波風を立てる……。精神病患者から見た社会、社会から見た精神病。その認識の隙間に悲劇は起こる。
品川駅構内の本屋さんを利用するんですが、その日はお目当ての作品が見つからず、帰ろうと思ったら「いま売れてます」のコーナーにこの本がありました。表4のあらすじを見ると、「ある閉鎖病棟で殺人事件が起こる……」みたいなことが書かれていて、精神病院で起こった殺人事件を描くミステリー小説だと思いました。東野圭吾作品もほとんど読んじゃったので、別の作家を読んでみようと思いました。ところがこの話、事件が起こらないまま、精神病棟の人々の描写で三分の2が過ぎちゃう。事件の場面も犯人がしっかり描かれているし、自首しちゃうから推理的な要素が全くない。ミステリーっぽいあらすじを載せるって詐欺じゃないか?
ただ、物語は悪くない。興味深い。殺人事件がという特殊なことが起こるけど、お話は社会派のヒューマンドラマです。凶悪犯が精神鑑定で精神病棟に送られる。それが本当に正しいのか。ラストの裁判の場面が印象的です。作者は精神病のお医者さんです。患者と呼ばれる人々への慈愛を感じさせる文章でした。
しかしこれ、単行本が1994年で文庫化が1997年。映画化が1999年。その本をなぜ品川駅の本屋さんが推しまくるのか謎。ドラマ化の話も聞かないし。あらすじも含めて、軽い騙され感のある出会いでした。本屋と編集者の考え方の方がミステリーだよーっ。(←ニシオカスミコ風に読んで)
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